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2008.04.30(水)

名医の決め手

閻魔様が地獄の鬼たちに、こう命じた。

「沙婆(しゃば)へ行って、名医を探してくるよう」

付け加えて、こうも教えた。

「その門前に、恨めしそうな面の幽霊がいない医者が名医というものだ」

鬼たちは、早速のこと沙婆に行き、幾多の医者の門前を通ってはみるが、どこに行っても幽霊がたむろしている。

ところが最後になって訪ねた医者の門前には、ただ一人しか幽霊がいない。

「これこそが名医に違いない」

そう言いながら、辺りによくよく話を聞いてみたところと、実は昨日に店を開いたばかりの医者であったそうだ。



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2008.04.29(火)

ある夜の喧嘩

ある御店の旦那と女将さんのことじゃ。

何やら、ひどく怒った旦那がこう言った。

「もう、お前ぇなんかとは口きかねぇからなっ」

だが、旦那には次の朝に、たいそう大事な仕事の打ち合わせがあったらしく、寝る前になると、こう言った。

「明日の朝は、ちゃんと起こせよ」

さてっと、次の朝のこと。

女将さんにすれば、

「話なんかしたくない…」

そう言われたことをまだ根に持っていたとしても当たり前のこと。

だから、半紙に

「朝にございます。起きて下さいまし」

とだけ書いて、朝餉の用意をしていた。

するってぇと、寝過ごした旦那の方は大変だ。
 
女将さんに向かって

「なんで起こしてくれなかったんだ」

そ、怒鳴り散らした。

しかし、女将さんは顔色一つ変えずに

「ちゃんと起こしました」

の一言を書いた半紙を示した。

旦那はその半紙を見るや、余計に怒ってしまった。

無理も無い。

夜の喧嘩は朝になってもっと悪化した…という話だ。



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2008.04.28(月)

借り物の達人

半兵衛さんの家では、以前から何かと物を借りに来る、向かいの新吉に困り果てていたとな。

「お前さんったら。今度は新吉さんが来ようとも、もう何も貸さないようにしようじゃないかい」

「そうだ。そのとおりだ。何かと理由をくっつけて、きっぱり断ってやるぜっ」

そんな、こんなしているところに、ちょうど新吉がやって来てこう言った。

「半兵衛さんよぉ。ちょっとの隙、ノコギリでも貸しておくんなせぇよ」

「いやいや。生憎ですなぁ。今日は一日中ずっと大工仕事に使うもんで…悪いねぇ」

「悪いだなんて、とんでもねぇ。じゃ、なんなら釣り道具でどうでぇ。大工仕事に釣竿を使わないんなら、ぜひともお借りしますぜッ!」



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2008.04.27(日)

侍の念仏

ある侍がいつも念仏を唱えていた。

気になった殿様が侍に問い質した。

「戦さに臨んで人を殺さねばならぬというのに、何で故に終日念仏を唱えているのじゃ」

侍は答えた。

「それがしは、口では念仏を唱えておりますが、腑では人を殺す気で満ちております」

それを聞いた殿様はたいそう感心して、侍に褒美を執らせたそうだ。



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2008.04.26(土)

苦難の元凶

「先生、お助けくだせえや!」

「何だね、藪から棒に」

「全然眠れないんです。夜になると気が滅入って、苦しくて、生きているのがイヤになるんでぇ」

「ほう、それでは早速のこと診てみようではないか」

しかし、診立てに異状は見当たらない。

「よろしいか。寝るときは安楽に。苦難の元凶を寝床にまで持ち込んではなりませぬ」

「でも先生…。妻は勝手に寝床に入ってくるんですゼ」


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2008.04.25(金)

別れ話

長屋の甚六95歳と94歳になるお時ばあさんが言い争いをしておった。

「わたしゃね、夫婦になった最初っから、この人が嫌いだったんじゃ」

「なにを言うかッ。このワシだって、こんな女、端っから大嫌いじゃったわ!」

間に入ったご隠居。

「なになに、まっ、お二人とも落ち着きなさいよ。夫婦になってどれくらいかな?」

「75年と半年でさあ」

「なんとまぁ、そんなに長い間のこと、お二人とも我慢していたんですかね?」

「子のためでえ。子供のこと考えると、夫婦別れを待っていたんでぇ」

「ほう、大人になるまで待っていたと?」

「いやいや。死ぬまで待っていたんでぇ」


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2008.04.24(木)

願い事の叶う泉

願い事の叶うと評判の泉があったと。

「この泉に向かって願い事をすると叶うんだそうな」

「まあ、なんと素敵だこと」

「じゃあ、まずオレから試してみるとするか」

夫は泉に身を乗り出して願い事を唱えると、銭を投げ入れた。

「じゃあ、今度はわたしの番だね」

妻も泉に身を乗り出して、願い事を唱えようとしたその瞬間…!

妻は平衡を失って泉に落ちてしまい、二度と浮いてこなかったんだと。

「こりゃすごい。もう、オイラの願い事がかなったなんて」


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2008.04.23(水)

たっての頼み

「ばあさんや、今まで長いこと苦労を掛けたね…」

「なにを言うんですか、おじいさん。また元気になって苦労を掛けてくださいよ」

「いや、もうわしは長くはない。そこでだ、一つ、お願いがあるんじゃ」

「なんでも言ってくださいな。なんでも」

「わしが死んだら、ばあさん、向こう長屋の熊の野郎と夫婦になってやってくれ」

「まあ、なんてこと。馬鹿なこと言っちゃいけませんよ。私は誰とも結婚しませんから。おじいさんだけですから」

「ばあさんや、たっての頼みじゃ。熊の野郎にはずいぶんと昔、たっぷり嫌がらせをされてな。この際だから、仕返ししてやらにゃ気がすまんのよ」


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2008.04.22(火)

新婚夫婦の貯金

新婚夫婦の妻が提案したそうな。

「ねぇ、ちょいとアンタ。今度から1回いたすたんびに、貯金しようと思うの」

ちょっと照れくさそうに夫。

「そりゃ、いい考えだ。銭がたんと貯まりそうだな」

1ヶ月の後…銭函を開けてびっくり。

「いくらなんでも、どうしてこんなに貯まってるんだ?」

「他の人はみんな、あんたみたいにケチじゃないのよ」


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2008.04.21(月)

三つの願い事

酔っ払いの男が海岸を散歩していたときのことじゃ。

壷が流れ着いた。

擦ってみると、煙とともに現れたのは、お決まりの大魔王。

「はっはっはっ。千万年の眠りから覚ましてくれた礼といってはなんだが、願い事を3つだけ叶えてやろう」

「願い事だって? ありがてぇや。もちろん酒だっ! 酒をくれ」

ボッ!

男の手には、いつのまにか器が握られて、溢れんばかりの酒がつがれていたそうな。

男がそれを一気に飲み干すと、中身はまたいつの間にか、溢れそうな酒が注がれている。

「それは魔法の器でな。中身が空になると、すかさず酒が注がれるようになっている」

「へぇー、こいつはスゲぇや!」

「で、あと2つの願い事は何にする?」

男は一生懸命考えた挙句、こう言った。

「この器をあと2つくれ」


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2008.04.20(日)

居酒屋の吸血鬼

吸血鬼が連れで、居酒屋に入ってきた。

「えーらっしゃーい。旦那、なんにしやすか?」

「じゃあ、とりあえず血液!」

「じゃあ僕も、同じにして! 急ぎでな」

「おーっと、オレのは赤血球抜きにしといてくれ」

「ヘイ、わかりやした」

店の奥に戻ると聞こえてくる声。

「お二人様ぁ。ナマふたつー。ひとつはライトでー」


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2008.04.19(土)

医者の償い

ある医者の話じゃ。

幸か不幸か、例の医者、幼馴染の藪氏のことではないぞよ。

その医者、少しほど、薬のさじ加減を間違えたとかで、人様の息子を死なせてしまった。

一考した医者は、代償にと自分の息子をさし出して事が収まったそうだ。

そうしているうちに、次はある家に仕える下男を死なせてしまってな。

その償いにと、今度は自分の家にいた下男をさし出して、これも丸く収まったそうだ。

と、ある晩のことじゃ。医者の門を叩く者がおった。

「うちの奥様が産後の病いで苦しんでおられます。どうか、お急ぎで診てくださいまし」

その医者、今度は妻に向かって、そーっと言ったそうだ。

「今度は、お前に惚れた人が現われたようだ」



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2008.04.18(金)

授業中の癖

「先生、うちの小僧は寺子屋でちゃんとやってますかい?」

「いいことを聞いてくれました。実は授業中に席を立って、出ていってしまうことがあります。退屈な授業にならないようにと、私も気配りをしているのですが…」

「あっ、先生! そりゃ安心くださいまし。授業が退屈なんかじゃありませんぜ。ちょっとした癖なんですぜ」

「ほう…、ちょっとした癖?」

「へぇ、あの小僧、寝てる真っ最中に歩き出すっていう、変な癖があるんです」



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2008.04.17(木)

総体子宝

長屋の熊ん家に、お子を授かったというお紺さんが訪ねてきたときの話じゃ。

「よう、お紺。おめぇさん、なんだって、そんなに太っちゃったんだい?」

「ちょいとヤダよ、熊さんたら。知ってんじゃないかい。この大きなお腹で赤ん坊が育ってるからよっ」

それを聞いた熊の野郎ったら、

「そら来た!」

ってーばっかりに目ぇー輝かせながら、こう言やぁがった。

「じゃあよう、お紺。おめぇさんの尻じゃあ、いってぇ何を育ててるんだい?」

「…」

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2008.04.16(水)

盗みの罪

「お奉行様、うちの亭主を牢屋から出してやっておくんなさいまし! 一日も早く戻ってきて欲しいのでございます」

次郎吉の上さんは、途方に暮れてお奉行んとこに駆け込んだんだと。

奉行は尋ねた。

「次郎吉の刑の程は?」

「ひと月です」

「あい、分った。ところで、何を咎められておるのじゃ?」

「盗みでございます。餅を盗んだんでございます」

「わざわざ、こうして来られたということは、子にとっては良き父親であるか?」

「いえいえ、とんでもない。いつだって子供たちをぶん殴っては、賭け事ばっかりしてにございます」

「ほう…。ではでは、いい夫ではあるか?」

「いえいえ。あっちこっちの女と、しょっちゅう浮気して、そりゃ困ったもんでございます」

「ほう…さて。では、いったい、何ゆえにして早く戻って欲しいと望むのか?」

「はい。実は家の餅がもうすぐ無くなりそうなんでございます」



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2008.04.15(火)

お昌の診たて

長屋のお昌が、医者に相談したそうな。
 
「どうしました。お昌さん」

「先生、まぁ聞いておくんなさい。オナラが止まらないんで困っています」

「ほう、若い娘が困りものじゃのぉ」

「ええ、何をしていても出るわ出るわで。でもこのオナラときたら、音もしないし、臭いもしない」

「なるほど、それで?」

「今だって、わたしゃオナラをしどうしです。先生は気付いてないでしょうが、この診察室に入って、もう24回もしているんですよ」

「なるほど。そういうことですか」

そう言って医者は薬の包みを取り出しました。

「では、この薬を飲んでみることですな」

「はい、ありがとうございます」

さて、その翌日のこと。

お昌が勢いよく、医者のところの駆け込んできた。

「先生! あの薬はいったい何なんですか」

「何だい、藪から棒に」

「突然、オナラがすごく臭くなりましたよ! おまけに、びっくりするほど大きな音まで出るようになってしまって。恥ずかしいったらありゃしない」

医者はこう言った。

「あれはじゃな。鼻づまりと耳づまりに極めてよく効くと評判の薬なんじゃよ」



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2008.04.14(月)

大きな数

寺子屋でのことじゃった。

大五郎と亀吉が話をしておった。

「大五郎は大きな数ってぇのは、いくつまで数えられる?」

「そうだなぁ。おらぁ千までだったら数えたことある。じゃあ、亀吉は?」

「おらぁ、三千二百五十九までなら数えたことあらぁ」

「へえ。そりゃすげーや。で、なんで三千二百五十九までなんだい?」

「そこで手習いが終わっちまったんだ」


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2008.04.13(日)

証拠の品

大工(でぇーく)の棟梁が、以前に長屋におった弥助に尋ねたとな。

「おい、弥助ー。昨日のこと、おめぇが仕事休んだのは、博打、打ってたっていう噂ぁ、小耳に挟んだんだが。まさかよ、その噂ぁ本当じゃあねぇーよなっ」

「何おっしゃいやす、棟梁。そんなん嘘に決まってますぜ。博打になんか行っちゃぁねぇっていう証拠の品が、あっしにゃあちゃんと揃ってますからに!」

「おお、そうだったか。証拠の品か?」

「ヘイ! この魚でごぜーやす!」


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2008.04.13(日)

虎の夫婦別れ

父虎と母虎が、子虎の親権をめぐって争っていたんだと。

お奉行様は子虎に、こう尋ねた。

「なあ、子虎。父虎と一緒に暮らしたいのか?」

「いやだ!いやだ! 父虎は、私をムチで打ちまする」

「なるほど、そうか。では、母虎と一緒に暮らしたいのだな?」

「いやだ!いやだ! 母虎も、私をムチで打ちまする」

「さて、困ったものじゃ。では、いったい誰と暮らしたいのじゃ?」

「はい、お答えします。私は阪神タイガースと一緒に暮らしたいのです」

「さて?」

「だって、誰も打たないんだもの」



世に申すところの"虎キチ"の皆様方に申し上げまする。
この惣兵衛にして、誓って悪意はござらぬ。
小話の上のこと…、小話にでござる。
で、宜しゅうに。

ちなみに、かく申す惣兵衛がしは、旧くから「鯨」を奉っておったに。

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2008.04.12(土)

留吉の貧乏神

以前この長屋に、留吉というたいそう貧乏な男が住んでおってな。

えらく働き者なのだが一向に貧乏から抜け出せない。

それどころか、かわいそうなことに年を追うごとに貧乏になるばっかりじゃった。

「働いても働いても貧乏になるばっかりだ。さて、どうしたもんか」

そこは思案のしどころ。

「さては!この家にゃあ貧乏神がいるな。そうなりゃあ、貧乏神にご馳走をしようじゃないか。そうすりゃ、少しは貧乏でなくなるかも知れねぇ」

留吉は喰うものも喰わず、貧乏神にひたすらご馳走を差し出し続けたとか。

ところが、留吉は前にも増して貧乏になるばっかり。

とうとう腹を立てた留吉は大声で怒鳴りだした。

「こらッ、貧乏神ッ。こんなにご馳走しているのに、何が不満で貧乏にするんだぁ」

襖の間から顔を出した貧乏神は小さな声でこう言った。

「留さんよぉ。お前さんとこ、あんまりに居心地がいいんで、女房子供も連れてきた。当分世話になるよッ」


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2008.04.11(金)

東往西往

右往左往じゃあ、規模がちっちゃくていけねぇ。

あっちの世界の話だからして、さしづめ「東往西往」ってとこかな?


さてさて、亡くなった夫のために法事を営むことになった。

坊さんが言うには、

「銀三銭をくれたなら、必ず西方浄土に行けるよう、経を上げる」

ところが亡くなった夫の妻が悪質の銀をくれたので、それを知った坊さんは東方に行く経を上げた。

当たり前のこと、妻は満足するはずもなく、今度は良質の銀を換算して不足分を足し、あらためて西方に行くお経を上げてもらったそうな。

そして妻は泣きながらこう言ったとか。

「かわいそうにお前さん、たった幾分かの銀子のために、東に行ったり西に行ったりさせたわね。ほんとに辛いわ」


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2008.04.10(木)

閻魔の安楽

ある亡者の話じゃ。

さて、人間に生まれ変るとするときに閻魔様が

「金持にしてやろう」

と申し渡したとか。

その亡者は、

「富は望みません。せめて一生衣食住に不自由せず、平凡に毎日を過ごすことが出来ましたら、私はそれで満足でございます」

そう言うと、閻魔様は座を下りてきて言ったそうな。

「そのように安楽なところがあるならば、どうかして、わしも一緒に連れて行ってくれないか」


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2008.04.09(水)

粗忽息子

十四、五歳にもなるっていうのに、そりゃまぁ、間抜けなことばっかしやってる息子がおったと。

ある日のことじゃ。

いきなり駆け込んで来たと思ったら、

「かあちゃん、銭ぃー拾った。小判だ、小判だ!」

「そりゃ、よくも拾ったもんだね! たいしたもんだ、お前は。それにしても、小判を落とすような粗忽者もいるもんだね。さっ、さっさとお見せ…」

すると、息子は言ったそうな。

「いや、拾ったにゃあ間違いねぇんだけんど、ここに着くまでに落としてしまったわさ」


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2008.04.08(火)

急な病

また、例の医者の藪氏の話じゃ。

夜おそくなって藪の家に、たいそう有名な江戸の大店、越後屋の小僧が駆け込んできたってわけだ。

「お店(たな)の奥様が急に倒れました。夜分に急ぎで願います」

藪のことだから、大変慌てて急ぎ足で越後屋に向かったそうじゃ。

着いてみれば、越後屋は大さわぎの只中。

藪は店に飛び込むなり、いきなりそこに居合わせた若い女中の手を取って、やおら脈を看はじめましたぁ。

驚いたのは、その女中。

「なんとしょう、病人は私ではありませぬ」

例の藪は、妙に落ち着き払って

「一刻を争う際に、誰の彼のと言ってはおられぬ」

と言ったそうな。

越後屋の奥方、それから結構な長い間、患っておったそうだが、ついぞ藪が玄関をくぐったのを見た者はいなかったそうだ。

そりゃそうだ。


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2008.04.06(日)

遠来の客

驟雨のあとの夕方のことじゃった。

路地でばったりと知り合いに出会うた。

「さてさて、この頃は、すっかりご無沙汰を申しました」

「なになに、手前も昼夜客人があって、忙しさにお見舞いも出来ませぬ」

「はて、それはまたどうして」

「今年は庭前の泉水に蓮の花が大分咲きましたゆえに、昼は方々から見物においでになる」

「それはもっともでござるな。しからば、夕刻にはおいでなされては」

「さすれば夜分には、はるばる極楽から仏様たちが遊びにござるがゆえに、夜の間も寝られませぬ」


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2008.04.05(土)

医者の藪

わしの幼馴染に藪と名乗る医者がおってな、ちょっとでき過ぎかもしれんが。
そこんところは、まあ、黙ってお聞きなさい。

ある日のことだ。
長屋の八兵衛と出かけたところで、向こうから藪がやってきたというわけだ。
八兵衛の野郎が、何の弾みかぶつかって、藪はスッ転んでしまったってーわけだ。

「危ないであろう」
藪は立ちあがると、八兵衛のえりっ首をひょんづかまえて、叩こうとする。

八兵衛の野郎、負けちゃいない。、
「てやんでぇ、足で蹴るのはかまわんが、手でぶつのだけは、ねげーさげだー」

藪は八兵衛に向かって、こう尋ねたわけだ。
「はて、何故に、そのようなことをいうのか?」
そりゃそうだろうな。

八兵衛の野郎、なんて言ったと思うか?…

「足で蹴られて命は助かるが、てめえの手に掛かったんじゃあ、助かるもんも助からんじゃあねえかよ。世間じゃあ、もっぱらの評判だぜぇー」

藪はパンパンと裾の埃を払うと、ツンとして行っちまったってーわけよ。


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2008.04.01(火)

川の昼寝

寺子屋でのことじゃ。

先生が「川」と「河」の字の違いを教えようとしておった。

まず、川の意味を分かり易く説明しようと、字引きを引いて調べようとしたが、どうしても見つからん。

しばらくパラパラと字引きをめくっていると、「三」という字が目に留まったとな。

何を思ったか、その先生、膝を叩いてこう言った。

「川のやつ、こんなところで昼寝をしておっては、見つからんハズじゃな」


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